Cave de Oyaji

20075月の南仏紀行


U.ヴィサン(Visan)ラストー(Rasteau)そしてシャトー・グリエ

2007年旅行記そのT
2007年旅行記そのV
2007年旅行記そのW



ヴァンサン・ロシェット


CdR セザール ロッシュ・オードラン


オードランの畑

ドメーヌ・ロッシュ・オードラン

宿舎をダンテル・ド・モンミライユの麓のホテルにとって翌523日は朝から予定が一杯。先ずはビュイッソン村に新しくシャトーを構えるロッシュ・オードランに向かう。宿のあるジゴンダス南部から北に向かった。コート・デュ・ローヌのヴィラージュ(村名)表記ではヴィサン(Visan)になる所で、数年前、オードランのワインを試してその品質の高さに驚かされたものだ。

ロッシュ・オードランの当主はまだ若いヴァンサン・ロシェット氏である。彼のワインはコート・デュ・ローヌ表記の銘柄が4種、全て自社畑で収穫された葡萄を使用する。3年ほど前から日本にも輸出されるようになったが、以来彼のワインはローヌフリーク達の眼鏡にかない現在では他の国にも引く手あまたと聞く。殊更に最上キュベである“Le Cailloux”はシャトーヌフ・デュ・パプ近郊の秀逸な畑からのヴィエイユ・ヴィーニュ(古い樹齢の葡萄木)で、この銘柄は優良作柄の年しかリリースしないがマニア垂涎の一本である。

ヴァンサンの作業場はゲストルームを兼ねて現在建築中である。既にほとんど完成しているが、細かい所は作業中で全て自分自身がこつこつと手を入れている。貯蔵庫内は綺麗に整頓され、フードル(大樽)も新しい。他にボルドータイプの小樽もあるが、これは実際にボルドーの有力シャトーの一年樽で様々な作り手の樽があった。醸造過程の最後にこれらボルドーの樽でエルヴァージュするのだそうだ。

ワインをテイスティングする前に彼の畑を見学する事にした。今回最も興味ある対象が彼の畑であるのだから、ゆっくりと見させてもらうようにお願いした。なにしろ彼のワインで驚くのは畑毎の味の相違である。畑は用水路一本隔たるだけで仕込みは同一、それでいてワインの個性が異なるのが不思議だった。彼と共にシャトーの裏に広がる畑を歩いて参観する事にした。


ちょうど葡萄(グルナッシュ)の受粉期で葉々の合間に葡萄の花の花芯が見える。これから日々剪定(芽摘み)と葉の間引きの作業が大変らしい。この作業は私が訪れたドメーヌの至る所で実際に敢行して見せてくれたが、作り手毎に少しずつ工程が異なる様子で大変興味深かった。まぁ、如何に素晴らしい果実を実らせるか、と言う点では目的は同一なのではあるが。

実際にヴァンサンの畑は良く手入れをされた所で、周囲の環境にも恵まれた場所なのが印象的であった。畑は南側にわずかに傾斜し、周りを潅木(南仏固有のガリーグ)に囲まれた理想的な立地条件である。これが如何に大事な要素であるかはローヌ渓谷の偉大な造り手の畑が全て同様なテロワールにある事を思い起こさずに入られない。

ロッシュ・オードランはこれからの作家である。素晴らしい環境と常に向上心を持ってワイン造りに日々努力するヴァンサンの話は実に魅力的であった。例えば葡萄の育成にプラスと考えるならあらゆる試みにトライする。ビオであるし、時にはビオディナミの手法も取り入れる。しかし、ビオである事をあえて標榜する事はしない。自己のスタイルを貫くワインを造りたいのだとも言う。

これから必ずや彼のワインはワインファン達を唸らせるだろう。それは私自身確約するものだ。


グルナッシュ


貯蔵庫にて記念写真




ドメーヌ・グール・ド・モーティエンスの畑


モーティエンス貯蔵庫内部


ジェロームと一緒に

ドメーヌ・グール・ド・モーティエンス

ヴァンサンに別れを告げると案内役(全幅の信頼を置いている)の高瀬さんが「グール・ド・モーティエンスに行こう」と言う。ラストーで最も尊敬されるヴィニロンの一人で彼のワインはやはりローヌフリークの間では一種の信仰に近い形でもてはやされる。「最近、彼のワインはスタイルが変わったんですよ。2003VTから」彼とは当主ジェローム・プレシーの事で、ラストーではラ・スマドのアンドロ・ロメロと共に素晴らしいワインを造る事で著名である。「スマドの親爺さんは変人(失礼)だけど、ジェロームは本当にナイス・ガイで、ワイン醸造に於ける考え方も理想的な方向だと思います。エリック(ルーカス・トンバ)とも友人でいつもより良いワイン醸造を語り合う仲間でもあるんですよ。」と説明してくれた。

ラストー村北部郊外の瀟洒な建物がグール・ド・モーティエンスで、早速醸造蔵を案内してくれた。日中30℃を越える中、この温度管理されたシェ(貯蔵庫)に入るのは本当に嬉しい。解説によれば2001VTまでは新樽で仕込まれたワインは2003VTから当地伝統的なフードルと古い小樽で造られる方式に変わった。実際にワインを試すと01VTで感じたワインの樽特有の甘さが無い。グルナッシュ特有の冷涼感溢れる造りだが豊富なタンニンさえ感じるのは丁寧な収穫と注意深い醸造工程を感じさせる。これは伝統的なシャトーヌフ・デュ・パプの様に数年の熟成を心待ちにして飲みたいタイプのワインだ。

案内をアシスタント君にしてもらっているとジェローム本人が帰ってきた。“ナイス・ガイ”って見た目もなのね。彼はまるでアスリートの如きカッコよさでちょっと一緒に写真に撮られるのは照れる思いでした(^^;

2003Vtはもう買ったかい?」と言われたが「はは、まだなんだよね」と答える。「2003Vtからは本当に自信をもって薦められる。是非扱ってください」と言われた。もちろん手当てする心算である。

さてジェロームに別れの挨拶をしてこれから200Km離れたコンドリューに向かうのがこの日のスケジュール。ね、キツイでしょ?


シャトー・グリエ

さすがに腹がへったのでモーティエンヌから程近いケランヌ村のオーヴェルジュ、カステル・マリオで昼食をとった。3年前に此処に逗留した懐かしいホテルでオーナーの女性も覚えていてくれたのが嬉しかった、なんて話はさておき、一路高速道路を北上してヴァランスへ。サン・ジョセフからローヌ河沿いのワイン街道をさらに北上し、コンドリュー村に入る。目的はシャトー・グリエ。

今回の旅で事前に唯一日本で私がインポーターにお願いして紹介していただいたシャトーでもある。コンドリューワイン、ヴィオニエ種に依る素晴らしい白ワインを体感するのには先ずこのシャトー・グリエを知らなければならない。また、ディケム、モンラッシェと並び評されるフランス三大白ワインのひとつとしてグリエが喧伝される理由とは何だろうか。

ローヌ河沿いの道からほんの少し山側に入った細い道を登るとすぐに、見落としてしまうほど小さな、シャトー・グリエの表札があった。ここから200mほど入ると石造りのシャトーがある。山の急斜面を開墾して立てられたものでもちろん中世以来の歴史を誇る建造物である。そのシャトーの周囲は断崖に段々畑をしつらえたヴィオニエの畑が点在する。どの葡萄も皆手入れをし尽くされた状態の良好な樹木である事は素人の私にでも容易に判った。


シャトー・グリエ入口


シャトー・グリエ遠望



テイスティングボトル


マダム・イザベラと一緒に

案内していただいたのは現当主イザベラ・バラタン・カネで、(19世紀に所有がネイル・ガシェ家になり、後に醸造責任者となったアンドレ・カネのお嬢さんにあたる。)忙しいスケジュールをやりくりして説明してもらった。

コンドリュー地区のヴィオニエによるワインは近年2つのタイプに大別される。フレッシュなうちに飲むべきフルーティーなスタイルのものと、仕込みの際の手順から多少瓶熟成を待ってエキゾティックな風味を楽しむタイプとに別れる。後者はシャトー・グリエに代表されるワインで断然古典派と位置付けされるべきコンドリュー、いやヴィオニエであろう。

こんな深遠なワインを目指すシャトー・グリエでは最も注意すべき作業が葡萄(ヴィオニエ)の管理、まぁ何処でもそうなのだが、で日々の作業に於いて所有する3haの畑を常に10名前後の人員で行う。(後から聞いたがこれは異様に多い人員だよ、とエリック・ブルタンが驚いていた。)そしてワインの品質を保つ為にはあらゆる努力を惜しまない。それは独立したアペラシオンを名乗るプライドである、と明確に語っていたのが印象的であった。

周囲はコンドリュー指定の畑で名人達が競い合ってワインを醸している中、こんな決意は悲壮感さえ漂うが、本音なのであろう。サンプルのワインを試したがフランスワインのプライドを味わった様なものである。プライドの味は明快である。甘く切ないアロマと切れ味鋭いドライな風味はグリエの真骨頂でもあるのだ。


Cavist


シャトー・グリエからの帰路コンドリュー村でワインショップを見かけて冷やかしに入った。”Cavist”と言うちょっとベタな名前の酒屋で、ウイークデーの夕方、暇そうだったのかオーナーが丁寧には受け答えてくれる。

「おっ、ヴァケラスに泊まっているのか。じゃサン・デ・カイユーやデ・トゥールだな。」やっぱりご当地でここらへんはよくご存知だね。
「日本かぁ、一度は行ってみたいんだよね。」なんて言う。調子に乗ってこちらもワインを数本買ってしまった。アンドレ・ペレやゲランのロティ。日本では見かけない銘柄である。

宿舎のオテル・モンミライユに帰ったのは午後8時過ぎ、でも周囲は昼間の様に明るい。今晩はホテルのダイニングで夕食を頼んだ。急いで風呂に入ってテーブルにつき、おもむろにビールを2杯頼んだよ。今日は暑かった。

このホテルのメイン・ダイニングは屋外である。爽やかな風に吹かれて食欲も沸き起こる。で〜もオーダーは主菜の魚アラカルトだけ。絶対に量が多いからね。案の定、ふた皿出てきた。でもタラのポワレの上に乗るタブナードソースの旨い事。マルサンヌのワインを3杯お代わりしました(^^;

仕事の後くらいゆっくりと食事してもいいよね。このホテルはリゾートだけあって妙に居心地良いです。

                                                  2007年旅行記そのV

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