Cave de Oyaji

コート・デュ・ローヌの旅(中編)

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                                      エピローグ

北ローヌ行

宿をとったケランヌ村はオランジュ市より東北に入った場所でここが我々(家内と高瀬さん)の前線基地になりました。翌3月4日はここから高速道路A7を北上してアンピュイを目指す。とは言っても150Km以上遠隔の地で宿を8時半に出ました。ヴィエンヌのインターチェンジに到着したのは10時過ぎ、ここからアンピュイの街並みまでは10分ほどです。運転は現地で活躍する高瀬さんの車で彼女のてきぱきとした運転にすがりっぱなしでした。実は旅行の前に国際免許を申請して彼女を手助けしようとも画策しましたが、まぁ、運転は止めときました。

ドメーヌ・ジル・バルジュ

アンピュイはコート・ロティの中心街です。瀟洒な市街の背面には名だたるコート・ロティの斜面(皆シラー畑)が連なります。この日最初の訪問先であるドメーヌ・ジル・バルジュはこの最も著名なロティの畑であるブリュヌの麓に所在しました。

コート・ロティと言えばギガルやシャプティエ、ルネ・ロスタンが思い浮かばれるでしょう。しかし私は真っ先にこのバルジュを訪れました。親爺は個人的に彼のワインのファンなのです。

素晴らしくエレガントで慎ましやか、熟成が加わるとシラーの力がバランスされたワインの味わいとして表現され飲む者を魅了する。一言で言えばジル・バルジュのワインはそう表現できます。

朝駆けにも拘らず、彼は我々をにこやかに迎えてくれました。想像通りのワイン蔵の様子はガレージを大きくした様相と想えば宜しい。あちこちにワインメイキングの為の道具が散らかり、奥には木樽が連なる。ジル・バルジュは丁寧にワインのサンプリングをしてくれました。主に2002年と2001年ものです。

マルサンヌ、コンドリュー(ヴィオニエ)、サン・ジョセフそしてコート・ロティ。ロティは2銘柄あります。コート・ブリュヌ、キュベ・デ・プレシーです。プレシーも畑の名前でブリュヌとブロンドの中間点に位置する畑。(親爺はこれが大好物なんだね)

彼は長年の経験に基づき独自のワイン造りを敢行する。現代のワインファンには古典的とも見られがちな醸造法を守っております。

しばらく時の過ぎるのも忘れてワイン談義。「ムッシュは俺のワインで好きなのは?」と言われて「プレシーですよ!あの柔らかなフィネスはたまらない」 「おぉそうか!じゃあね、俺(ジル)はワイン造っていて91と99VTってのは一番心に残る作柄なんだ。これを飲んでよ。」と1999のコート・ロティ・ブリュヌを一本いただいたのです。感激だよなぁ!

写真の木製プレス機は彼のワインのエチケットにも載る古いもので現在も使っているそうです。帰り際にお昼のレストランもちゃっかり紹介してもらいました。(写真)このサークル・・は酒屋でアンピュイ周辺のワインを全て取り揃える凄い場所ですが隣にレストランを併設し、購入したワインを飲ませます。料理も折り紙付き。シェフ・ソムリエに「おまかせでね」と言うとタラを薦められました。これに合うワインはハウスワインで何?と問うとマルサンヌ(キュイレロン)を出してきました。俺此処に住もうかなぁ〜、これは飽きないよね。本気でそう考えたりして。

コート・ロティ コート・ブリュヌ斜面

ドメーヌ・ジル・バルジュ

ジル・バルジュ

 

木製プレス機        話しこむ親爺

ドメーヌ・ジル・ロバン

レストランで旬のタラのポワレに舌鼓を打った後、車で南下しました。タン・エルミタージの著名な丘を遠望しながらポール・ジャブレの巨大なレセプションセンターも通り過ぎ、高瀬さんの紹介で現代的なワイン造りで定評あるドメーヌ・ジル・ロバンを訪問しました。

AOCではクローズ・エルミタージュのシラー種を造る作家で仏国内では評判の高いドメーヌなのです。彼の醸造所は外見が平屋ですが、内部は地下5mほど掘り下げた広大な敷地で此処に醸造設備や貯蔵庫がありました。これはワインの醸造と保存に最も適する、と彼が考え出して設計したそうです。

ワインはサン・ジョセフの赤・白、クローズ(赤)です。畑は周囲に所有地が広がり、ほぼワイン農家としては理想的な立地条件と感じました。テイスティングは瓶詰めされた2002年もの、樽熟成途上の2003年ものをそれぞれ試しました。彼のワインは初体験でしたがクローズものとしては出色といえるバランスを示す。アラン・グライヨのワインが試金石となりますが、彼のワインと比較すればジル・ロバンは明らかにバランシーでしょう。ど〜んとくるインパクトはないが飲み飽きないワインです。これは凡庸なネゴシアンものや組合ものが出回るクローズ・エルミタージュのワイン事情を考えれば素晴らしい事実なのです。

彼(ジル・ロバン)のワインは一部日本でも紹介されておりますが、どうも正しい評価をされているかは甚だ疑問が残ります。彼の丁寧な仕事振りは畑を見た際にも感じる事が出来ました。なんと彼のシラーの木々周辺にはヌフパプの畑の如き大きな白石が点在する!あぁ、やっぱりね、太陽の恵みを充分に受ける葡萄のワインが美味くない訳はない。彼のクローズ・エルミタージュは一飲の価値があります。

コルナス

国道を再び南下、コルナスに向かいました。コルナスは小さな田舎町で街道筋の宿場町の風情ですが名だたるワインメーカーも多い。オーギュト・クラップ、ノエル・ヴェルセ、アラン・ヴォージェ、ティエリー・アルマンは名士ですが、今回はそれらに匹敵する新参ワインメーカーを訪ねました。

ドメーヌ・ヴァンサン・パリ

Vincent Paris は当主の名前です。コルナスでは旧家でこの地でずっとワイン造りをしていましたが、彼が2年前にワイン造りを引き継ぎ、設備も一新してワインの醸造方法も再検討しました。

彼は未だ若いのですがワインにかける情熱は素晴らしい。なにしろ南向斜面の雑木林を開墾してシラーを植樹したほどです。蔵でのテイスティングの前にコルナスの畑を俯瞰できる場所まで登りました。殆ど山登り(ヒルクライムという奴)状態で四輪駆動の車でなければ進めないような場所でした。

畑の傾斜が30度くらいはある。樹木の剪定作業は蟹の様に横に進みながら行うそうです。例によって石ころがごろごろしているので油断するとすぐに足を滑らすそうです。命がけだよね農作業も。コルナスの街並みはおろか南のサン・ペレまで眺望できる高台なのです。

彼の作業場に戻って2000年から2003年もののタンク内のワインまで試飲させていただきました。一部がサン・ジョセフ銘柄、他はコルナス表記です。

30年ものシラーと60年ものシラーを別に小樽で熟成させ、アッサンブラージュし、さらにタンクに置いて瓶詰めするそうです。2001年ものワインから彼独自の醸造法を用いた為、2000年VTと2001VTとでは全く異なるシラーと感じました。圧倒的に2001VTの方が優れています。これは作柄の差ではない。2000年コルナスがシラーの辛気臭さを持つよくあるネゴシアンワインを連想したかと思えば、2001年ではミルキーな舌触りと香草の香り豊かな余韻、密度の濃いタンニンを感じる。これは素晴らしくチャーミングなワインです。酸味も充分あって熟成にも耐えるでしょう。あえて言えばクラップ風なワインと感じました。熟成を加えればどうなるかは想像もつきません。

「2002はどうだ?」と聞かれたので「驚いた!これが悪い作柄のシラーなの?」と答えると「なにしろ出来上がったワインの量はこんなもんだよ」とアッサンブラージュの済んだタンクで透けて見えるワインの総量を示します。おそらく2000本は欠けるよね。そんなもんでしょ。要するに葡萄の収量と醸造量を極端に抑えてクオリティを保った訳です。帰り際、この2002(貴重な!)コルナスをヴァンサン君が即座に瓶詰めしてエチケットを貼り付け私に持たせました。それが理由でもありませんが、この知られざる名人のワインを是非日本でも紹介したいと考えております。

ケランヌに帰るともうすっかり夜更けでした。

ドメーヌ・ジル・ロバン

ワイン貯蔵庫

ジル・ロバン氏(左)

ドメーヌ・ヴァンサン・パリ

ヴァンサン・パリの所有畑

シラー

畑の頂上からパリ氏と共に

ヴァンサン・パリ氏と

 

コート・デュ・ローヌの旅(後編)に続く

 

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